全財産百万円の私に百万円の時計を強請った彼

彼は６歳上の小さなリフォーム会社を経営者している人でした。
気さくで、優しく、自然にリードしてくれる彼に私は夢中でした。

付き合って半年。
二人の誕生日が近づいてきました。
私たちは誕生日が１か月違いで、先に３月生まれの彼のお祝いの話になります。
最初はプレゼントは何でもいいと言っていた彼ですが、いつの間にか時計の雑誌を買ってきて「これがかっこいいよなー」なんて言い始めました。
「結構高そうな時計だな、いくらなんだろう？」と値段を見てみると、いち、じゅう、ひゃく…百万円です！
そこで無理だと言えばよかった。けれど私はこれまで彼に食事をごちそうになってきたことや、洋服をプレゼントしてもらったことなど考えると、自分だけが彼の望みに応えられないなんて恥かしくて言えなかったのです。

ケチと思われたくなかったのです。

「これが欲しいの？いいよ！任せてよ」
言ってしまいました。
彼は断りながらも、最終的には私が買いやすい雰囲気で会話を終わらせます。
そして、やってしまいました。買ってしまいました。人生最大のお買い物。
カードも持っていなかったので現金を数回に分けておろし、百万円の時計を購入。
お札を数える男性店員さんはとても大変そうだったのを覚えております。
私は、ホストに貢ぐ女と思われていたでしょう。

誕生日。
彼にプレゼントを渡すと、申し訳なさそうな顔をしながらもとても喜んでもらえました。
「本当に買うなんて…冗談だったのに」
彼は言いますが、いえいえ冗談なんかじゃなかったですとも。
そして、彼からとんでもないことを言われました。
「ポイントは？」
「これだけの金額だからポイント結構たまったでしょ？それはどうするの？」
ああ…この人はポイントも欲しいんだな。
その瞬間色々なことが頭によぎりました。
この人は少し前に「好きな人の為ならどこまでできる？全財産すてることもできる？」と、私に聞いてきたな。
なるほど。百万円が全財産だと前に話したので、百万円の時計を強請ってきた。
そしてポイントも強請ってきた。
これは・・これは・・“私は愛を試されているんだ！そうに違いない”

翌月、私は自分の誕生日に１０万円のネックレスを貰い、連絡が途絶えました。
私は差引９０万円とポイントと彼氏を失ったのです。

私の何が間違っていたのでしょうか…。