不幸話をでっち上げ同僚からお金を騙し取っていたK子。その過去を知らない人に暴露するのは罪ですか？

7年ほど前、今の勤務先に転職したばかりの頃のことです。
私と同じように中途採用されたK子とM美と親しくなりました。

K子は体重が100kgはありそうな、いろんな意味でダイナミックな既婚者で33歳。対してM美は、色白でおっとりとした京美人で31歳独身。私もM美と同い年で独身です。

生まれも育ちも個性もバラバラな3人ですが、とても気が合い、仕事終わりのチョイ飲みや、休日のランチなど、よくでかけたものです。

半年くらいが過ぎた頃、K子の遅刻や欠勤が目立ち始めました。理由を聞くと、ご主人が体を壊し仕事を辞めて自宅に籠っているとのこと。
精神的に不安定なのでひとりにしておけないと…。
普段は快活なK子が落ち込んでいる姿に、事態の深刻さが伺い知れました。

私とM美は、必要以上には立ち入らず、何かできることがあれば遠慮なく言ってねとだけ伝えて見守っておりました。

ある日の深夜、突然K子から電話があり、お金を貸してほしいと言われました。
具体的な金額は言わず、とにかく困っていると言うのです。
相変わらずご主人は無職で、家賃も払えず、車は車検が切れていて乗ることができない。交通費がなくなれば出勤すらできなくなる。もう3日も何も食べていない…と。

私が、ご実家に相談するよう提案しても、何かしら理由を付けて無理だと繰り返し、M美には内緒にしてほしいと何度も懇願する様子に違和感を覚えながらも、最後まで話を聞きました。

私は、若い頃に友人にお金を貸して、お金も戻らず友人関係も破綻した経験をしていることから、現金を貸すことはできないと、そこはきっぱりと断りました。
ただ、食料を差し入れするから、なんとか給料日までしのいでほしいと言いました。

K子の声は、決して喜んでいるようには聞こえなかったけれど、私なりにできることをしたいという思いが強く、今になって考えると、その時は私自身、冷静さを欠いていたのかもしれません。

翌日早起きして、24時間営業のスーパーに寄り、インスタント食品や缶詰、パンやスナック菓子などを大量に買い込んで出勤しました。
買い物袋を両手に下げて休憩室の前を通ると、K子の話し声が聞こえたので、あ！来てる！と嬉しく思い、小走りにK子のもとへ向かいました。

K子は他の課の子と談笑していました。
そこへ私が歩み寄り、「ここに置いとくね」とだけ言い、テーブルの上に買い物袋を置き、そのまま立ち去ろうとした時のことです。

「なにこれ？」とK子の声。
一緒にいた子が、「K子にじゃないの？」と聞くと、「知らな～い」と、我が耳を疑うやり取りが聞こえてきました。
あまりのことに身動きができず、ただ立ち尽くす私の横を素通りして、休憩室を出て行ったK子。

誰もいなくなった休憩室の、テーブルの上に残った買い物袋。
不思議と怒りはなく、かといって悲しくもなく、なんとなくこうなることがわかっていたような、そんな気分でため息をついた私の背後から、グシュグシュと鼻をすする音が聞こえてきました。
振り返ると、そこにはM美が目を真っ赤にして立っていました。

仕事終わりにM美と二人、買い物袋をぶら下げM美の家へ。
そこでM美から、K子に10万円もの大金を貸していることを打ち明けられ、そんなM美と同じ立場の人たちが他にも複数人いるということを知らされました。

その後、M美は欠勤を続け、そのまま退職。踏み倒された人たちは20人以上にものぼり、その総額は100万円を越えたと聞きました。

ご主人が交通事故に遭ったとか、お母さんがガンだとか、家が火事になったとか、泥棒に入られたとか、すべてがK子の作り話。
友達だと信じていたその人は、嘘だらけの最低なヤツでした。

携帯番号を変え、自宅も引っ越して雲隠れしたK子。
お金を貸した人たちは、泣き寝入りするしかありませんでした。

そんなことも忘れかけていた先月のこと。
久しぶりに会った友人から、最近入ってきた派遣社員の中に、驚くほど巨大な女子がいるという話を聞き、まさかと思いながら名前を聞いてみると…。
そのまさかが的中。K子でした。

友人に、過去の金銭トラブルについて話していいものか。
M美を含め、踏み倒された人たちに教えるべきか。
プライバシーにも関わることなので口外すべきではないと思いつつも、事実を知りながら伝えないということがK子と同等の罪のような気がして、ずっとモヤモヤしています。

言うも罪、言わぬも罪ならば、いっそ言ってしまおうかと思い悩む日々…。

長い付き合いの友人を守りたい。
踏み倒された人たちに、いくらかでもお金が戻るお手伝いがしたい。
詭弁でしょうか…。

アドバイス、お待ちしております。